運営ノウハウ

2016年08月30日

全国整骨院・鍼灸院インタビューVol.4 株式会社 I企画 稲川史人氏

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教員と経営者という二つの立場から見る整骨院の在り方、指導の方法とは

株式会社 I企画 稲川史人氏

多数の学生を前に知識と技を伝える教育職と、多院展開する自らの会社の経営。限られた時間のなかで学生に思いを伝え、会社を動かすことの難しさは想像に難くない。しかし異なる二つの立場だからこそ、見えることがある。二足の草鞋を履く異色の治療家に、その心の内を伺った。

治療家の道から教育者への転換

inagawa1新潟の実家が祖父の代から三代続く整骨院だった稲川氏。幼い頃から、将来は治療家になることに何の疑いも覚えていなかったという。しかし仙台の柔道整復師専門学校で師と呼べる先生と出会い、教壇に立つ姿を見るにつけ「教える」ことへの憧れも胸に湧きたった。そして24歳の頃、縁あって東京に向かうと遂に夢の実現へと動き始める。「柔道整復師の教員資格の取得は、そう難しいものではありません」と稲川氏が語るように、当時で5年、今では3年の実務経験があれば講習を受けて教員資格は取れる。しかし難しいのはそこからだ。そんな事実を、日本健康医療専門学校の教員となってから痛感することになる。
「師匠が弟子に1対1で教えるのとは違い、学校では1対30。目で見て覚えろ、というわけにはいきません」。なぜそうなのか。それは本当に正しいのか。現場で培った勘のようなものを、明確な言葉に変換する作業。しかしそんな問答を繰り返すうち、自分自身の経験は明確な理論となり、考えの整理にも繋がった。学生に伝えることで形をなす知識は自分自身にフィードバックされ、自らの経営にも活かされた。さらに経営する院があることで、卒業後の学生のフォローも可能になる。「自分が教えたことの責任という意味でも、学生の面倒は生涯みていきたい」との言葉も心強い。
教育者と経営者。どちらかを疎かにするのではない。両者に全力で取り組むことで、それぞれのスキルが磨かれる。そんな好循環が生まれたのだ。

教えるということの難しさと大きな責任

inagawa2教壇に立つ際に常に意識するのは技術について。とりわけ柔道整復師という職業本来の意義である外傷の技術には強いこだわりがある。「近年専門学校は試験対策、予備校的なイメージが強くなっています。しかし、本来は柔道整復術を学ぶ場所。その延長線上に国家試験があるのです」と稲川氏。だから外傷の技術は決して疎かにせず、学生ひとりひとりが理解できるまで、繰り返し指導する。

もちろん資格を取らせることも軽視するわけではない。柔道整復師国家試験の合格率は年々減少傾向。しかし健康な生活の根幹を支えるこの業界がなくなることはない。ならば、まずはこの業界を志した学生を、柔道整復師としてのステージに立たせることは教員に課された使命だ。合格のためにまず重視するのは、3年後、4年後を見据えたプラン作り。これは院経営にも共通する哲学だ。

コツコツ積み重ねることで成長曲線に従い、最後に一気に能力が上昇する。それを実感として知っているからこそ、継続の重要性を繰り返し学生に説くのだ。

さらに現場での心構えや卒業後の進路についてなど、経営者や治療家としての経験を総動員して知識はあますところなく伝える。在学生はもちろん、卒業生から寄せられる質問にも、真摯に向き合う。「ネガティブなニュースもありますが、大勢の力を合わせれば必ず変えていけるはず」それが稲川氏の思い。学校という業界の入口で正しいことを教える。そうすればやがて必ず、良い治療家が生まれ、業界全体の活性化に繋がる。教員として目の前の学生を指導しながら、その視野は同時に、さらに先へと広がっている。

経営の基本となるのは本来の仕事である外傷

現在稲川氏は6院の整骨院を経営。3名の統括院長が裁量権を持ち2院ずつ担当するというスタイルのため、それぞれ特色は異なるが、もちろん共通点も多い。とりわけ外傷に強く運動療法に積極的であることは全院に共通する特徴だろう。

外傷に関しては、先述の通り「柔道整復師の本来の意義」という稲川氏の信念に由来する。整形外科医と連携をはかり、外傷の治療に当たる。それが患者さんのためになり、ひいては地域のためになる。

一方で運動療法は、さらに長期的な視野に基づく。社には5名のアスレチックトレーナーがいるが、来るオリンピックなど流行に惑わされているわけでもない。まず子供たちにしっかりと正しいトレーニングを指導し、怪我なくスポーツ活動ができるようにすること。そして、30~50代の方が、70歳まで元気に働けるカラダ作りを手伝うこと。基本はあくまで地域密着。理念として掲げる「地域の健康10%アップ」の言葉に忠実に、地域に根ざした治療を続けている。

スタッフと学生 教育方法の違いは?

inagawa3スタッフ教育も、根幹は学校での指導と同じ。相手の話をよく聞き、そして自らの考えを明確な言葉で伝える。なかでも繰り返し登場するのは「社会性」という言葉だ。「社会性がなければ仕事ではない」とまで言い切る稲川氏。患者さんにとって良いことなのか、地域にとって良いことなのか。常に問い続けることで、ものごとを大局的に見られるスタッフ教育を目指しているという。

教育と経営という二足のわらじを履く異色の治療家・稲川史人氏。しかし、その本質は社会性という意味で一貫している。地域のため、生徒のため、あるいは業界全体のため。その思いが溢れ出しているからこそ、地域からも生徒からも、氏は絶大な信頼を寄せられているのだろう。

教え子である院長が稲川氏の思いを継ぐ

sasaki1稲川史人氏が代表を務める株式会社I企画。経営する6院のうちのひとつが、佐々木勇介先生が院長を務める「えびす整骨院」だ。代表である稲川史人氏の考えに基づき、外傷治療と運動療法に積極的。加えてこちらは、高校生の患者さんが多いことが特徴となっている。全体患者数のおよそ3割。区をまたいで来院する患者さんも多いという。

きっかけはボランティアで学校を回り、運動指導をしたこと。さらに医師との連携をはかりながら来院者の外傷を治療することを繰り返すうちに、やがて口コミで評判が広がった。「怪我をしたら、ここに来れば良い」という信頼感が、スポーツに励む学生の間で浸透したのだろう。

現在の発展の支えは勘ではなく数字の経営

もちろん、道のりが平坦だったわけではない。取り組みが即数字に繋がったわけでもない。技術を磨き、目の前の患者さんに真摯に対応しても、なお結果に繋がらない時期もあったという。そんな日々に変化を与えたのが、リグアの「グランドスラム(実務研修)」参加だったという。「それまではただ良いことをやっていれば患者さんは来てくれると思っていました。しかし研修に参加して、より大局的な考えも必要であることに気づいたのです」と佐々木先生。

現在は患者情報管理システムのCRMを利用しながら、勘ではなく数字で物事を考える。毎日の会議で個々の患者さんが求めることを話し合い、積極的なアプローチをかける。やがてそれは結果となり、徐々に再診率が上がり、つられるように新規も増える。その好循環を支えるのは、やはり勘だけに頼らない理論的な経営にあるのだ。

生徒、部下として見る稲川史人という人物

sasaaki2そんな佐々木先生に稲川氏について尋ねると「やはり学校の先生のイメージは強いですね」との応え。もちろん上司として、あるいは仕事仲間としての立場ではあるが、やはり心のなかにある信頼が「先生」の印象を強固にしているのだろう。

院経営はほぼ全面的に任されている。しかし時折意見を交換するときは「見ていることの広さが違う」ことを実感するのだという。自らが大局的であると思うことの、さらに上をいく広い視野。そのすべてが、稲川氏が唱える「社会性」という言葉に支えられている。患者さんのため、地域のため。広く物事を見て、そして技術を磨く。稲川氏の教えは、年月が過ぎても少しも揺らぐことはない。

「NO SKILL,NO LIFE」は今年I企画が新たに掲げたテーマ。まず治療技術を磨き、その技で地域の役に立つこと。その強い決意を胸に、I企画は今後も躍進を続けるのであろう。

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